2023.9.25
「人事評価に対して、社員から不服申し立てがあり、対応しなければならない」
「人事評価へのトラブルを防止したいが、どうすればいいかわからない」
このように悩んでいる経営層や人事担当者の方もいると思います。
不服申し立てとは、人事評価に対して納得いかない社員が会社に対して裁判を起こすことです。
最悪の場合、違法と判断され、会社側が損害賠償責任を負う恐れがあります。
本記事を読むと、不服申し立てについて以下のことがわかります。
人事評価のトラブルを解決・防止したい経営層や人事担当者の方は、参考にしてみてください。
人事評価とは、社員が出した成果や業務への取り組み姿勢をもとに、社員をランク付けして、給与や昇進を決定する評価の仕組みです。
社員の育成や、社員を適切なポストに配置するために人事評価を行います。
評価を行う期間は、「四半期に1回」「半年に1回」「1年に1回」といったスパンです。
人事評価では、会社からの評価だけでなく、社員が自己評価も行います。
評価の後には上司が部下をフォローする面談を実施します。
人事評価には、以下の3つの評価基準があります。
評価基準 | 特徴 |
---|---|
業績評価 | 社員が個人・チームで達成した業績にもとづき評価する |
能力評価 | 社員が発揮した能力にもとづき評価する |
情意評価 | 業務への取り組み姿勢にもとづき評価する |
これら3つの基準をもとに、人事評価を行います。
人事評価を適切に運用したい経営層や人事担当者の方は、人事評価制度について解説している以下の記事を参考にしてみてください。
人事評価で社員が不満をもつ理由は、以下のとおりです。
評価基準を明確にせずに運用してしまうことは、社員が不満をもつ理由の1つです。
評価基準があいまいであると、人事評価のたびに評価が大きく変わってしまうこともあります。
社員に対して評価の根拠を明確に説明できず、社員の不満につながるでしょう。
また、社員は評価を上げるために必要なことがわからない点も、不満をもつ理由になります。
評価者が主観的に評価を行ってしまうことも、社員の不満につながる理由です。
評価スキルのない社員が評価を行うと、対象者との人間関係や一時の感情によって、評価が変わることがあります。
主観的な評価には明確な根拠がなく、社員は評価に納得できず、不満を抱えてしまいます。
その結果、評価者と対象者の人間関係が、さらに悪化してしまうこともあるでしょう。
人事評価について、上司から説明・フィードバックがないことも、社員が不満をもつ理由です。
とくに、評価が低かったときには、社員は評価の背景を理解できないと、ストレスを抱えてしまいます。
また、社員は今後の改善点もわからないため、評価を上げるためにするべきことを考えられません。
人事評価の後に上司がフォローの面談を実施しないと、社員が不満を抱えます。
人事評価の結果が昇進・昇給に反映されないことも、社員が不満をもつことにつながります。
一般的に、高い業績を出した社員やチームに多大な貢献をした社員は、良い評価をもらえるでしょう。
しかし、人事評価が高いにもかかわらず、給与が変わらないケースがあります。
社員が「会社に対して献身的に活動したのに、評価してもらえない」と感じ、不満を抱えてしまいます。
その結果、「どれだけがんばっても給与が上がらない」「人事評価は意味がない」と社員が思ってしまうでしょう。
不当に降格・降給されることがあると、社員は不満を持ってしまいます。
評価内容にかかわらず、会社から社員に説明もなく降格・降給すると、社員から不服申し立てをされる場合があります。
「社員の勤務態度が明らかに悪い」「理由もなく欠勤し続けている」などの明確な理由があるときのみ、降格・降給をするべきでしょう。
社員に降格・降給をするときには、決定に至った背景を丁寧に説明することが求められます。
不服申し立てにつながる事例を4つご紹介します。
人事評価の制度が法令(強行法規)に違反している場合、社員が不服申し立てを行うことがあります。
強行法規とは、会社と社員間の合意よりも優先される法令です。
たとえ、会社と社員間で人事評価について合意があったとしても、法令に違反していると、社員は不服申し立てを行えます。
社員が出した成果を評価に反映しないと、社員の不服申し立てにつながるおそれがあります。
成果が評価と連動しておらず、公正に社員を評価していないことが、不服申し立てを実施できる理由になります。
また、会社には評価の内容や理由について説明する義務があるので、成果を出した社員が納得のいく評価をしましょう。
人事評価と給与が連動していないと、不服申し立てにつながる可能性があります。
そもそも人事評価とは、社員の給料やポジションを決めるために行われる制度です。
評価内容が給与と連動していないと、会社が社員を不当に扱ったことになります。
その結果、会社の損害賠償責任につながるおそれがあります。
人事評価制度が適切に運用されていない以下のケースも、不服申し立てにつながるおそれがあります。
評価のプロセスを適切に行っておらず、人事評価が形骸化(中身がない)していると、不服申し立てにつながる可能性があります。
上司が面談のフォローを行っていないケースや、評価作業を管理職が怠った場合、違法と判断されることがあります。
人事評価の制度の運用計画をしっかりと遵守しないと、会社側が違法と判断されるおそれがあるでしょう。
社員に対して高すぎる目標を設定してしまうことも、社員が不服申し立てを実施できる事例です。
高すぎる目標を社員に設定した場合に、目標を修正する機会がないと、社員はどれだけがんばっても目標を達成できなくなります。
その結果、人事評価が低くなると、社員から不服申し立てをされる恐れがあります。
社員が成果を出すために、会社側が成長を支援する施策を行っていないと、不服申し立てを起こされる可能性があります。
会社には社員の能力開発を行う義務があり、社員の成長を支援しなければいけません。
社員に対して成長の支援が不足していると、人事権の濫用とみなされ違法と判断される恐れがあります。
人事評価に関するトラブルを防止する方法を5つご紹介します。
人事評価に関するトラブルを防止するために、評価基準やプロセスについて弁護士に相談することがオススメです。
弁護士に相談すると、法令に違反する恐れがあるポイントを教えてくれます。
人事評価だけでなく、社内規則や社員との契約内容についても弁護士に確認すると、トラブルを避けられます。
不服申し立てが発生すると、会社側は多くのコストを払うことになり、評判も落ちてしまうでしょう。
弁護士に相談しトラブルを未然に防ぎましょう。
人事評価の目的を明確に全社に周知することも、トラブルを避ける有効な手段です。
会社の課題や導入目的が明確であれば、効果の検証が可能です。
定期的に人事評価の効果を検証・修正することによって、評価に関する業務の形骸化を防ぎ、適切に運用できるようになります。
人事担当者は必要に応じて、研修や説明会を実施して、人事評価の目的を周知しましょう。
評価基準を見直して明確にすることも、トラブルを防ぐ1つの方法です。
人事評価の基準は3つあります。
評価基準 | 特徴 |
---|---|
業績評価 | 社員が個人・チームで達成した業績にもとづき、評価する |
能力評価 | 社員が発揮した能力にもとづき、評価する |
情意評価 | 業務への取り組み姿勢にもとづき、評価する |
これらの評価ごとに、「Aランクに達する基準」「Bランクの定義」などランク付けしやすいようにしましょう。
ランクの基準を明確にすると、評価者ごとの評価のばらつきを防げます。
評価者が適切に評価できる能力を身につけることも、トラブルを未然に防ぐことにつながります。
主観的な評価は、社員が納得できず不満をもつ理由になります。
評価者が基準にもとづいて客観的かつ公正に評価できるよう、会社側が支援しましょう。
社内に評価スキルを向上させるノウハウがない場合、外部の研修を受講することも検討してみてください。
事前にトラブルを防ぐために、人事は人事評価をチェックして適切に運用されているかどうか確かめましょう。
評価者が適切に評価できているか確認し、適切でない場合はフィードバックをします。
また、評価を行った後に、上司が部下にフォローアップの面談をしているか確認してください。
上司から部下に対して、評価内容の説明やフィードバックがないと、部下は不満を抱いてしまうからです。
人事が人事評価の運用に積極的に関与しましょう。
人事評価への不服申し立てをなくすためには、適切に評価を行うためのフレームワークを利用すべきです。
評価するときに使えるオススメのフレームワークを5つご紹介します。
人事評価について詳しく知りたい経営層や人事担当者の方は、以下の記事を参考にしてみてください。
【担当者必見】人事評価とは?メリットや問題点、見直しの方法を紹介します
MBO(Management by Objectives)とは、チーム・個人に割り振られた目標の進捗によって、社員を評価するフレームワークです。
会社全体の目標を細分化して、チーム・個人に目標が割り振られます。
社員の要望やスキル、経験を踏まえて目標を設定します。
MBOの特徴は、目標を達成するために必要な業務を洗い出して、業務管理を徹底することです。
目標管理に困っている方は、MBOについて解説している以下の記事を参考にしてみてください。
目標管理(MBO)とは?メリットやデメリット、運用の流れを紹介
OKR(Objective and Key Results)とは、定性目標(Objective)と定量目標(Key Results)の達成度によって、社員を評価する手法です。
定量目標とは、数値によって達成度を検証できる目標を指します。
たとえば、「今月、10件の契約を獲得する」「ユーザーの解約率を10%減らす」などの目標です。
会社全体の定性目標を設定した後に、社員が定性目標を1つ、定量目標を3~5つ設定します。
OKRにおいて、達成確率60%ほどの定量目標が、妥当な目標とされています。
OKRの導入ノウハウが気になる方は、こちらの記事を参考にしてください。
360度評価とは、上司のほかに同僚や部下などの一緒に働く社員たちが、対象者を評価するフレームワークです。
複数人が評価者となるため、客観的で公正な評価をできることが特徴です。
一緒に働く人が評価者となるため、社員は自分の行動が適切かどうかを振り返る習慣がつきます。
上司が常に部下の業務を把握できていない場合でも、適切に対象者を評価できるフレームワークです。
360度評価の概要や企業の導入事例について、以下の記事で詳しく解説しています。
360度評価とは?メリット・デメリット、導入企業例を紹介します。
コンピテンシー評価とは、成果を出す社員の共通点(行動特性)を評価項目として設定し、対象者を評価する手法です。
成果を出す社員に共通する点を「行動特性」と呼び、会社ごとに独自の行動特性を設定します。
たとえば、「チームメンバーをやる気にさせるコミュニケーションを取れる」「リスクを洗い出して未然に防げる」などが行動特性の例です。
設定した評価項目が必ずしも成果をだすための要素ではないこともあるため、定期的に見直す必要があります。
コンピテンシー評価についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
コンピテンシー評価は公正な評価制度?成功につながるコツを詳しく紹介
ノーレイティングとは、社員を「A・B・C」などのランク付けを行わない評価制度のフレームワークです。
日ごと・週ごとに、社員は上司と設定した目標の進捗を振り返り、上司はその場でフィードバックを行います。
社員はリアルタイムでフィードバックをもらえるため、業務の取り組み方をすぐに軌道修正でき、成果を出す可能性が高くなります。
上司とのコミュニケーションが多く、会社の方針変更に対して柔軟に対応できる点もメリットです。
人事評価とは、社員が出した成果や業務への取り組み姿勢によって、社員をランク付けして、給与を決定する評価の仕組みです。
適切に人事評価を運用しないと、社員が不服申し立てを行う場合があります。
成果が評価に反映されない場合や、評価と給与が連動していない場合に、会社側が賠償責任を負うおそれがあります。
経営層や人事担当者の方は、弁護士への相談や評価基準の見直しを行い、人事評価に関するトラブルを防ぎましょう。