2023.10.2
部下が成長するには、指導者の育成スキルが欠かせません。
育成スキルが低いと指導者が理不尽な指導をしたり、誤った知識を伝えてしまったりすることがあるでしょう。
社員のモチベーションが低下するような指導をしないためにも、指導者は人材育成に必要なスキルを身につけることが大切です。
モチベーションアップや人材育成のためにOKRやMBOを使った目標管理を行う企業も増えています。
本記事では、指導者にとって必要なスキルや役職ごとの育成ポイントについて詳しく紹介します。
これから部下を指導する立場になる方や、指導者の育成に悩んでいる人事担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
人材育成の本質は「自社の経営理念やビジョンの実現に貢献できる人材を育てること」です。
企業が存続するためには、社員全員が同じ理念を持って業務を遂行して利益を生み出すことが大切です。
利益を生み出すためにも、社員には新しい能力やスキルを身につけてもらうことが必要となります。
人材育成をすることで社員の能力を最大限に引き出し、企業の発展につながる社員を育てられるでしょう。
人材育成が重要であることは、以下の記事でより詳しく紹介しています。人材育成に必要な目標の設定方法や目標の事例も把握できますので、ぜひ参考にしてみてください。
人材育成に必要なスキルを具体化すると、以下の6つのスキルに分けられます。
もし上記の中で不足しているスキルがあれば、スキルを身につけられるよう意識して業務に取り組みましょう。
組織内の課題を発見するためには、現状を的確に把握するスキルが欠かせません。
課題を見つけてどのような人材が必要かを把握することで、はじめて自社に必要な人材を育成できるのです。
例として、売上の伸び率が鈍化している営業部に原因をヒアリングしたところ、交渉の得意な人材が不足していることがわかったとします。
この場合、新規雇用や人事異動で交渉力のある人材を営業部に配置し育成することで、売上の伸び率に関する課題を解消できるでしょう。
「組織にある業務内容や必要なスキルを把握することで、課題を発見し解決策を考える力」が人材育成の基本スキルとして必要です。
現状把握で見つけた課題を人材育成で解決するためには、目標設定スキルが必要です。
目標を明確にしないと、方向性がぶれて社内に必要な人材を育てられない可能性があります。また、社員の能力やスキルに合わせた目標を立てなけばなりません。
たとえば、営業部で売上300万円獲得できる人材と800万円獲得できる人材がいた場合、後者に対して売上1,000万円獲得の目標を課すのが望ましいでしょう。
もし前者に課してしまった場合、実現が難しく社員のモチベーションが下がりかねません。
「社員の成長につながる」かつ「難易度が少し高めだが実現できる」目標を立てられる力が指導者には不可欠です。
目標を立てたら社員が期日までに達成できるよう、計画通りに実行することが大切です。社員を育成するために、どのような計画を立てるか考える能力が指導者に要求されます。
経理部門で「年内に貸借対照表を作成できる」という目標を立てた新入社員を例に考えてみましょう。
この場合、知識や能力がまだ身についていない新入社員に対して、小さな目標を複数設定します。
1つの目標を小さな目標に分けて計画を立てることで、達成できるように促せるのです。
また「新入社員は業務の遅れを見越してスケジュールを考える」といったノウハウもあることが望まれます。
目標達成を実現するためにも、社員に合わせた計画を立てられるスキルが育成担当者には必要です。
コミュニケーションスキルは、部下との信頼関係構築のために必要です。部下の信頼がないと上司がどれだけいい指導をしたとしても聞いてくれない可能性があります。
部下がアドバイスの内容を受け入れてくれるには、日常的に会話をして親密な関係を作らなければいけないでしょう。
フィードバックするときもコミュニケーションスキルは欠かせません。コーチングやティーチングを使い分けて指導する能力が指導者に試されます。
他にも部下のモチベーションの向上につながる言葉選びのセンスや、傾聴力をもっていることが必要とされています。
指導者には部下の目標達成を促す責任があります。部下の育成は長期間にわたるため、部下が途中で投げ出さないようにフォローする可能性も出てくるでしょう。
部下のやる気を落とさないためにも、指導者は率先して部下とコミュニケーションを取る必要があります。
部下が成長できるよう先導したり、部下のキャリアを親身になって考えたりするリーダーシップが人材育成で求められます。
複数のプロジェクトを管理できるようなマネジメントスキルも、人材育成には欠かせません。
指導者は通常業務と人材育成を並行して実施しなければならず、多忙な中で時間を作って部下を育成する必要があります。
人事担当者の場合も、複数の研修を同時並行で計画・実行する必要があり、人材育成のマネジメントをする力が要求されます。
人材のマネジメントは、適切な手段で実施することが大切です。
こちらの記事で人材マネジメントに必要なフレームワークや手順について詳しく紹介していますので、ぜひお読みください。
役職によって所持している能力やスキルが異なるため、それぞれの役職にあった人材育成が必要です。
ここでは、3つのタイプの役職に分けて人材育成のポイントを紹介します。
新入社員に向けての人材育成では、早期退職の防止を意識しながら取り組みましょう。
入社への不安を取り除き、緊張を和らげるため、コミュニケーションをしっかりとることが大切です。
ある程度アイスブレイクができたら、社会人として必要な知識やマナーを身につけるように座学や実習をします。
担当部署の業務ができるよう、一通り業務プロセスについて教えましょう。
中堅社員の場合、企業で重大な役割を担っていることに気づかせる必要があります。
仕事を何年も続けると、マンネリ化してモチベーションが下がりかねません。いま一度キャリアプランを明確にし、新しいスキルを身につけてもらいます。
中堅社員の中には管理職候補の人材もいるでしょう。管理職になる前にマネジメントの経験を積めるよう、プロジェクトを任せることも人材育成の1つの手段です。
管理職は経営理念に基づいた行動をし、社員が目標達成できるようマネジメントする役割をもっています。経営者の視点をもって物事を進める能力が必要です。
判断力や経営スキルを伸ばすために、組織論や経営論の知識を習得できる研修制度を設けましょう。
他にも、部下の育成のために幅広い能力やスキルが求められます。必要に応じて社外研修を実施することも検討しましょう。
人材育成はどの会社でも重要な任務です。しかし、人材育成の制度が整備されていない会社もあるでしょう。
会社によって異なりますが、大きく以下の3点が人材育成をできていない原因だと考えられています。
課題に対しての解決策も紹介しますので、該当する項目があればぜひ読んでみましょう。
部下が仕事を覚えて、新しいスキルを習得するためには充分な時間が必要です。しかし、先輩社員や上司が通常業務で忙しくて、人材育成に割ける時間がない場合もあります。
取引先から引き受けた業務の方が優先度が高いため、いくら人材育成が重要なタスクだとしても後回しにされがちです。結果、部下の成長が遅くなってしまいます。
解決策として以下のことを実施しましょう。
もし業務が多いのであれば、工数削減に取り組む必要があります。自動化できる工程があればツールを導入して社員がやる作業を減らしましょう。
また、社内で人材育成向けの動画教材を作れば、指導する工数を削減できます。
同じ内容の動画を繰り返し視聴できるようになるため、業務で必要な知識を早く身につけられるでしょう。
スキルの低い指導者が人材育成をしても、社員の成長にあまり効果がありません。
育成側にスキルがないと質の低い指導をする可能性があり、生産性の低下につながります。
間違った知識やスキルを教えてしまい、業務トラブルが発生することもあるでしょう。
指導者が適切に人材を育成できるよう、事前に研修を実施しましょう。
人材育成の意味や自社での指導方針を伝えるための社内研修を実施し、人材育成の重要性を落とし込みます。
必要があれば外部から講師を呼び、対象者が基本的な指導スキルを身につけられるようにしましょう。
人材育成しても評価されないと、どの社員も人材育成に注力しません。高い評価をもらおうとする結果、自分の業務を優先するでしょう。
人材育成の基準がないと、どのようなスキルを部下に習得させればいいかがわからず、人材育成を後回しにする可能性もあります。
指導者が人材育成に力を入れられるような評価基準を設けましょう。
評価を得るためにやるべきことが明確になるため、指導者のモチベーションを向上できます。
自主的に育成スキルを習得しようとする社員も増え、指導者の成長を促せるでしょう。
指導者のモチベーションを維持する方法の1つに「人事評価制度の見直し」があります。評価基準の設定方法を確認したい方は、以下の記事を読んでみましょう。
できるだけ早く部下を育てて人材不足を解消したいと考えている方は、以下の5つの方法を取り入れてみましょう。
効率的に育成する方法を知ることで、指導者の業務負担も削減できます。
OJTとは「On-The-Job Training」の略で、先輩社員と新入社員が一緒に通常業務をしながら指導する教育制度のことです。
新入社員に業務を経験させることで、必要な知識やスキルを習得させられます。
実践的なスキルが身につくため、即戦力になる人材を育成できるでしょう。育成にかかるコストも低いため、コストパフォーマンスの高い育成手法です。
OJTを導入したい方は、メリットや進め方について把握できるこちらの記事を読むことをおすすめします。
OJTとは?メリットやデメリット、具体的なやり方を紹介します
役職や職種ごとに求められるスキルや能力を一覧にしたものを「スキルマップ」といいます。スキルマップを用いることで、社員一人ひとりが持っているスキルや能力を可視化できます。
不足しているスキルも把握できるため、人材育成の計画を立てるツールとして利用可能です。
人材を適材適所に配置するときの参考にもなるでしょう。
適材適所に人材を配置できると社員の離職防止や生産性向上のメリットがあります。こちらの記事で詳しく知ることができますので読んでみましょう。
ビジネスにおける「適材適所」とは?最適な人材配置の施策や企業事例も詳しく解説
メンター制度は年齢の近い他部署の先輩社員が指導者(メンター)となって、新入社員(メンティー)をサポートする制度です。
メンターはメンティーに対して以下のようなことを支援します。
部署の異なる先輩社員がメンターになることで、新入社員が上司には言いにくい悩みを伝えられます。
メンター自身も指導経験を積めるため、育成スキルの習得が可能です。他にもメンター制度にはメリットがありますので、知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
人事評価制度を導入している会社であれば、人事評価システムを導入することをおすすめします。
人事評価システムでは、以下のようなことができます。
人事評価システムの導入で評価に関わる業務を効率化でき、育成業務に注力できるようになるでしょう。
ただし、人事評価システムはさまざまな会社がリリースしており、自社に最適なツールを選択するのは非常に難しいです。
もし人事評価システムを導入したい方は、人事評価システムの選び方について把握できるこちらの記事も読んでみましょう。
目標管理制度とは「社員自ら設定した目標を進捗具合や達成度などで評価する制度のこと」です。
社員が自ら目標を設定することで、目標を達成しようと自主的に行動するようになるため、人材の成長を促せます。
目標管理の種類には、MBOやOKR、KPIなどがあります。中でもOKRは組織力を向上できるツールとしておすすめです。
組織の方向性を統一でき、業務スピードを高められる効果があります。コミュニケーションの円滑化や人材のパフォーマンスを最大限に引き伸ばすことにも有効です。
こちらの記事でOKRのメリットをより詳しく知ることができます。OKRの導入を検討している方は必ず読んでみましょう。
OKRとは?【Google採用の目標管理手法】意味、導入事例、KPIやMBOとの違いを解説
質の高い人材育成をするためには、幅広いスキルが求められます。役職ごとに指導するポイントが異なるため、注意して育成に取り組まなければなりません。
指導者がスキルを身につけるためには、組織全体でさまざまな施策をして指導経験を積ませることが必要です。
研修を実施したり、新入社員の教育制度を導入したりして、人材育成の得意な社員を育ててみてください。
育成スキルの高い指導者を増やして、より組織力の高い企業を目指しましょう。