2023.2.7
経営資源の「ヒト」を適切に管理するものが、人事制度です。
しかし人事制度がうまく機能しておらず、社員のパフォーマンスが下がったり、離職率が上がったりする企業もあります。
具体的に、「どのように改革すればよいかわからない」と感じている人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、人事制度を改革すべきタイミングや、具体的な改革方法を解説します。
これから人事制度を改革したいと考えている経営層や人事担当者は必見です。
社内の人事制度を改革して、社員が働きやすい環境を整え、生産性をあげましょう。
人事制度とは、4つの経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の中で、もっとも重要と言われている「ヒト」を管理する制度です。
経営資源である「ヒト」は、唯一ほかの資源(モノ・カネ・情報)を扱えるため、「1番重要な資源」と考えられています。
人事制度を導入・運用する目的は、「社員のパフォーマンスを上げて、経営目標を達成するため」です。
その経営目標を達成するために、「人的資源管理」という制度を設計する考え方があります。
人事制度を設計・運用する「人的資源管理」について理解したい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
「ヒト」を管理する人事制度を大きく分けると、3つの制度から構成されています。
人事制度を構成する3つの制度は、以下のとおりです。
人事制度を構成する要素の1つ目は、「等級制度」です。
等級制度とは、社員を能力や職務によって序列化(ランク付け)し、業務内容や責任範囲を明確にする制度です。
たとえば、「部長」や「課長」といった序列は、等級制度によって決められています。
等級制度は、さらに以下の3つの代表的な制度に分けられます。
評価基準 | 概要 | |
職能等級制度 | 能力 | 社員の能力・スキルが評価・昇進の基準 |
職務等級制度 | 職務 | 社員の職務が評価・昇進の基準 |
役割等級制度 | 役割 | 社員が担った役割への貢献度が評価・昇進の基準 |
人事制度を構成する要素の2つ目は、「人事評価制度」です。
人事評価制度とは、企業が定めた評価基準・項目に沿って、社員を評価する制度を指します。
社員を評価する項目は、以下の3つです。
項目 | 概要 |
能力評価 | 社員の能力・スキルを評価する |
業績評価 | 社員が出した成果を評価する |
情意評価 | 社員の業務への取り組み姿勢やモチベーションを評価する |
これら3つの項目に沿って、対象の社員を評価します。
人事評価制度をこれから設計する方は、概要や導入方法を解説している以下の記事を参考にしてみてください。
人事制度を構成する要素の3つ目は、「報酬制度」です。
報酬制度とは、社員に支払う報酬(給与や賞与など)を決める制度です。
等級制度と人事評価制度の内容にもとづいて、社員の報酬を決定します。
報酬はお金(給与・賞与)だけでなく、次のような形で社員に提供することもあります。
人事制度をうまく運用できておらず、社内で問題が発生しているとき、人事制度を改革するべきです。
社内でよく起きる問題には以下のような例があります。
人事制度を改革するべきタイミングの1つ目は、社員が増えたときです。
会社経営がうまくいって上向きになり、社員を増やしてさらに成長を目指しはじめたタイミングで、人事制度を改革するべきです。
社員が増えると、従来の評価方法では対応できないこともあります。
1人のマネージャーや管理職が数十人の社員を管理するのは難しいので、従来の人事制度を見直したほうがよいでしょう。
管理職が適切に社員を評価できるように、社員の採用を拡大する前に、人事制度を改革してください。
会社の方針(ビジョンや戦略)が変わったときも、人事制度を改革するべきタイミングの1つです。
ビジョンや戦略が変わったとき、新しいビジョンに対する貢献度を、評価項目に追加・修正する必要があります。
また、国による働き方改革に合わせて「長時間労働への対応」「ワークライフバランスに合わせた柔軟な働き方の導入」なども行わなければいけません。
残業時間が長いことに対して是正したり、多様な働き方を認めたりする制度を導入しましょう。
人事制度が機能していないときに、適切な順序で改革する必要があります。
人事制度を改革する具体的なSTEPは、以下のとおりです。
人事制度を改革するために、まず会社の現状・課題を調査します。
経営理念や戦略を再確認し、社員が経営目標を達成するために、高いパフォーマンスを発揮できているか調べます。
社員へのヒアリングやアンケート調査などを行い、現状を把握しましょう。
また、業界内での給与水準を比較して「適切な報酬を支払っているか」を確認します。
「調査するコストを割けない場合」や「調査が難航したとき」は、外部機関に調査を依頼することもオススメです。
会社の現状・課題を把握したら、人事制度を改革する目的を明確にします。
人事制度を改革する目的を設定するとき、会社の課題を踏まえましょう。
また、人事制度の目標も定義し、効果を検証できるようにします。
人事制度を改革する目的を明確にしたら、等級制度を設計します。
「人事評価制度・報酬制度」は「等級制度」をもとに設計するため、最初に等級制度について考えます。
社員の等級に合わせて、人事評価制度・報酬制度の評価基準が決まるためです。
等級制度は会社の状況・方向性に合わせて、「職務資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」の3つから選択します。
また、等級の階級や条件を明確にしましょう。
等級制度を設計したら、人事評価制度を設計します。
人事評価制度を設計するとき、以下の2点を定義していきます。
人事評価制度は、社員の働きやすさやパフォーマンスに大きく影響します。
業務への取り組み姿勢や成果が正しく評価される人事評価制度を設計し、社員が働きやすい環境を整備しましょう。
次に、等級制度・人事評価制度を定義したら、報酬制度を設計します。
社員の等級や評価に対して、適切に報酬(給与や賞与)を支払う制度を作ります。
報酬制度を決めるとき、以下のポイントを定義しましょう。
給与や賞与について設計するとき、業界での給与水準を考慮してください。
人事制度を設計できたら、社内に向けて新しい人事制度を周知します。
新しい人事制度を周知するときは、以下の内容を伝えましょう。
人事制度を改革すると、社員によっては評価が落ちたり、給与が下がったりする可能性もあります。
そのような社員が納得できるように、新しい人事制度ついて丁寧に説明してください。
新しい人事制度を周知できたら、実際に運用し始めます。
人事制度が適切に運用できているかチェックしながら、必要であれば改善を行います。
管理職が評価スキルを身につけるために、研修を実施してもよいでしょう。
運用しながら改善を繰り返し、会社に適切な人事制度を構築しましょう。
人事制度を改革するときに、注意すべき点があります。
以下の注意点に気をつけると、人事制度改革をよりスムーズに行えるでしょう。
人事制度改革を成功させるポイントの1つ目は、人事制度に関する業務負担を減らすツールを導入することです。
社員の情報を一目で確認できるデータベースを導入すると、管理職は社員の評価をしやすくなるでしょう。
また、人事の事務作業を減らすツールを導入すると、より効率的に人事制度を行えます。
人事評価を効率的に行いたい方は、おすすめの人事評価システムを解説している以下の記事を参考にしてみてください。
人事評価の精度を高めると、人事制度改革をよりスムーズに行えます。
評価の曖昧さをなくし、客観的で公正な評価を行えると、社員が評価に納得できます。
評価スキルのない管理職には、適切に評価を行えるように研修を行いましょう。
また、人事が「管理職が社員に行った評価」をチェックし、不当な評価であれば是正してください。
人事制度を改革するとき評価制度のフレームワークを導入すると、より客観的で公正な評価を行えます。
評価制度に使えるフレームワークは、以下のとおりです。
MBO(Management by Objectives)とは、会社目標をチーム・個人目標に落とし込み、目標への達成度によって社員を評価するフレームワークです。
社員の個人目標は社員の要望やスキルを踏まえて設定するため、同じ等級でも目標が異なる場合もあります。
個人目標を評価する頻度は、半年~1年に1回ほどとされています。
MBOについて詳しく知りたい方は、目標管理について解説している以下の記事を参考にしてみてください。
目標管理(MBO)とは?メリットやデメリット、運用の流れを紹介
評価制度に使えるフレームワークの2つ目は「OKR(Objective and Key Results)」です。
OKRとは、定性的な目標(Objective)と定量目標(Key Results)を設定し、目標を管理する手法です。
経営層が設定した会社全体の目標をもとに、社員が自分の目標を設定します。
達成する確率が60%ほどの目標が適切であるとされており、社員はチャレンジングな目標を設定できます。
OKRの導入を検討している経営層や人事担当者の方は、以下の資料をダウンロードしてみてください。
こちらの資料では目標管理フレームワーク「OKR」がいかにして組織課題を解決するかを簡潔にまとめています。特に企業成長においては役職間での共通言語をつくることがとても重要です。マネジメントにお悩みの方は、ぜひご活用ください。
評価制度に使えるフレームワークの3つ目は、コンピテンシー評価です。
コンピテンシー評価とは、会社で成果を出している人の共通点(行動特性)を参考に設定した評価項目に沿って、対象者を評価するフレームワークです。
行動特性を設定するとき、会社や部署ごとに成果を出すための要素が異なるため、独自に設定しなければいけません。
設定した評価項目が必ずしも正しいわけではないため、定期的に見直しましょう。
次の記事では、コンピテンシー評価を含めた評価制度のよくあるフレームワークを紹介しているので、詳しく理解したい方は参考にしてみてください。
人事制度を改革して会社の価値を高めた企業はいくつもあります。
ここでは、人事制度を改革した企業事例をご紹介します。
日本マイクロソフト株式会社は、人事制度を改革して「ノーレイティング」を導入しました。
ノーレイティングとは、社員を等級によって序列化しない評価制度のフレームワークです。
日本マイクロソフト株式会社は、社員をランク付けするのではなく、顧客や自社への貢献度によって社員を評価しています。
わかりやすい評価項目を導入して、社員のパフォーマンスを高く維持しています。
GMOインターネット株式会社は、人事制度改革によって「360度評価」を導入しました。
360度評価とは、上司に加えて同僚や部下も対象を評価するフレームワークです。
GMOインターネット株式会社は、360度評価によって、社員が価値を発揮しているかお互いに判断する環境を作っています。
また、社員の等級や給与額も公開し、社員全員が役割・職務を全うしているか把握できるようにしています。
評価制度のフレームワークを導入したい方は、360度評価について解説している以下の記事を参考にしてみてください。
360度評価とは?メリット・デメリット、導入企業例を紹介します。
人事制度とは、会社目標を達成するために経営資源である「ヒト」を適切に管理する制度です。
「社員が増えたとき」や「会社の方針が変わったとき」は、従来の人事制度では対応できない可能性もあるため、人事制度を見直したほうがよいでしょう。
人事制度を改革するときに「業務負担を減らすツールの導入」を行うと、より効率的に人事制度を実施できるようになります。
これから人事制度の改革を行う経営層の方は、課題を適切に把握し、会社の特徴にあった人事制度を導入しましょう。
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